サプリメントはもともと栄養補助食品・健康補助食品という意味で、以前は食事で不足した栄養素を補給するという使われ方が多かったですよね。
でも近年では、食品と医薬品の中間的な使い方をされるようになりました。
その理由として、自然治癒力や免疫力を高める予防医学の重要性が認識され、予防効果を期待して使われることが多くなったからです。
髪も、抜け毛や薄毛がはじまってから対策するのではなく、予防するという考え方が広まってきています。
具体的には、髪にダメージを与える原因の「活性酸素」「紫外線」「皮脂の酸化」「頭皮トラブル」を取りのぞくことで防ぎます。
また、髪がはえるために不足しがちな栄養素を補給します。
そのときのポイントが、サプリメントで「重要な栄養素や補因子の欠乏をふせぐ」という発想です。
補因子:酵素のはたらきを助ける物質
髪は常に成長していますが、そのときどきで欠乏が蓄積すると、細胞レベルで減毛リスクを蓄積させて、あなたの将来の抜け毛や薄毛の可能性を高めるからです。
なぜ髪のためにサプリメントが必要なの?
「サプリメント・機能性食品事典」(下記参考文献)中で吉川教授は、現代生活ではビタミンやミネラルが不足しがちだと述べ、その理由に以下の5つを挙げています。
1) エネルギーの過剰摂取
現代は糖質や脂質などが過剰に摂取されるため、それらを代謝するためにより多くの微量栄養素(ビタミンやミネラル)が必要となっています。
2) 加工食品の多用
食品添加物等の活性酸素を防ぐために、ビタミンやミネラルが必要です。
3)体内で生成できない、または貯蔵できないため適度な補給が必要
ビタミンは人間の体内ではほとんど生成できない物質ですが、ビタミンの種類によっては(たとえばビタミンCなど)体内に貯めておくことができないため、適度に補給する必要があります。
4)食物に含まれる栄養素の減少
栽培方法の変化や農薬使用、土壌の質の変化によって、同じ分量の野菜や果物に含まれる栄養分が減少しています。
5)生活環境の変化
ダイエットやストレス・疲労などでビタミンやミネラルの血中濃度の低い人が増えています。また、とくに40代以降は食物から目安量の栄養素を摂るのが難しくなります。
身体の栄養状態が良くないと美しい髪は維持できません。
漢方で「髪は血余」という言葉がありますが、ビタミンやミネラルが不足すると、髪は他の器官や臓器に比べて優先度が低いため、あとまわしになると言われています。
いつ、どのように摂るのが効果的?
いつ摂っても構わないとされるサプリメントですが、本来は1日の目安量を三回に分けてとった方が効率的と考えられます。
理由は、食後にとった場合には空腹時より全般的に吸収率が高く、さらに血中で長く保持されるので、三回の食後に分けるとより効率的になるためです。
(推奨される使用方法があればそれを守りましょう。)
ビタミンCなど水に溶ける性質がある水溶性のものはいつでも吸収されます。ビタミンCを空腹時に摂取した場合は血中濃度のピークが1~2時間後にきます。食後にとった場合はゆっくりと吸収されます。ビタミンEなど油に溶ける性質がある脂溶性のものは脂質ととる方がよく吸収されます。
●水溶性ビタミン
ビタミンB群(B1・B2・B6・ナイアシン、ビオチン・パントテン酸・葉酸)、ビタミンCなど
●脂溶性ビタミン
ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB12など
副作用は?
ビタミンとミネラルは、その種類ごとに摂取量の上限量と下限値(推奨量・目安量)が定められており、その範囲内であれば心配はないとされています。
ただし、とりすぎると過剰症の危険があるものがあります。
●油溶性のものは蓄積しやすいため、注意が必要
具体的には、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKなど(ビタミンB12の過剰症の可能性ほとんどありません)。
●水溶性のものは蓄積しにくいが、一部注意が必要
ビタミンCなどの水溶性のものは摂りすぎても尿などから排出されるので過剰症の心配はあまりありません。
(ただしビタミンB6、ナイアシン、葉酸はとりすぎによる過剰症が認められるため上限値が定められています。)
飲み合わせの注意
食品と薬との飲み合わせで相互作用の問題が出ることがありますが、サプリと薬も飲み合わせによる副作用に注意を要する場合があります。
●サプリを摂取してはいけない、または注意が必要なケース
薬を服用している人や病気中の人は、自己判断で飲んではいけません。また、乳幼児も控えた方がいいとされています。妊婦や授乳中の方も医師に相談のうえで摂るようにしましょう。
サプリを選ぶときの6つのチェックポイント
1. 安全に作られている?
安全はもっとも重要な要素です。
ISO(国際標準化機構)またはGMP(適正製造規範)基準を満たした工場で製造されているか。
衛生や検査などが整った体制で品質管理されているかどうか。
2. 副作用に関して明示されている?
副作用なんてぜったい嫌ですよね。
ただ、服用している薬との飲み合わせで問題が出る場合があります。
そうした副作用についてのリスク情報が提供されているかは大切です。
薬を服用中であったり妊娠や授乳中の場合は、かならず医師への相談のうえで摂るようにしましょう。
3. 原料・成分・摂取量がはっきりしている?
原料や成分、指定量あたりの成分摂取量が明記されているかどうかは副作用をチェックするうえでも重要です。
製造・販売者の最低限の義務ですので、ここの情報提供がおろそかなサプリは選択しないようにしましょう。
4. データがある?
ビタミンやミネラル類の効果は臨床データが豊富ですが、それ以外の機能を謳っている場合は口コミだけでなく根拠となるデータが示されているかもポイントです。
5. 問合せ先や相談窓口は明確?
情報提供体制がしっかりしているところを選びたいですね。
相談窓口がきちんとオープンにされているかどうかは、顧客にたいする会社の姿勢をあらわしています。
6. 妥当な価格?
継続的に利用することが大事ですので、自分の経済状況に負担のないものを選びたいですね。
でも、安ければいいというものではありません。
きちんと作ろうとすれば、それなりにコストもかかるのが当たり前。(高ければいいというものでもありませんが。)
上の5つで合格点なのに安すぎるものは、いい加減に作られていないかと疑ったほうがいいかもしれません。
ぱっと見で高いなと感じたら、1日あたりの金額に換算してみて、納得できるかどうかで判断してはどうでしょうか。
まとめ
きちんと選択して、適切に摂取すれば、サプリメントは髪に大きな力になります。
髪は、内と外からケアすることが大切。髪や頭皮に必要な栄養を補給し、さまざまなダメージから毛髪環境を守りましょう。
これからの研究成果に期待
なお、2016年2月に東京医科歯科大が「加齢による薄毛・脱毛の仕組みを明らかにした」と発表して話題になりましたね。
加齢による薄毛・脱毛は毛包幹細胞を保護する17型コラーゲンが壊され枯渇するとのこと。
なぜ17型コラーゲンが壊されるかは不明ですが、DNA損傷応答で誘導される酵素「好中球エラスターゼ」によって分解されるというのです。
それと似た現象に、紫外線によって活性酸素が皮膚内のマトリクスメタロプロテアーゼ(MMP:コラーゲン分解酵素)を活性化させ、コラーゲンが分解されるというものがあります。好中球による活性酸素がDNAを損傷させる作用も同じです。
つまり、これまでビタミンEなど抗酸化物質が髪にもいいとは言われてきましたが、活性酸素によるダメージをおさえること(=抗酸化)で、薄毛・抜け毛が抑制されるという仮説には十分妥当性があるということですね。また、コラーゲンが産生されるためにアミノ酸やビタミンCが必須ですが、ビタミンCは体内に蓄積できませんし壊れやすいので細かな摂取が必要です。
今後ますます、栄養素・抗酸化物質の補給が薄毛・抜け毛予防に大切という認識は高まりそうです。
髪のピンチに活用!厳選おすすめサプリメント


参考文献:
医療従事者のためのサプリメント・機能性食品事典(編集:吉川敏一・炭田康史)
酸化ストレスから身体をまもる(嵯峨井勝)
活性酸素・フリーラジカルのすべて(吉川敏一・河野雅弘・野原一子)
他