育毛に大切なバリア層に界面活性剤がもたらす影響の裏表

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近年女子を悩ませている薄毛の原因として、男性と同じように皮脂や角質の悪玉説も聞かれますが、みなさんはどのように受け止めていますか? 管理人としては、それなりに役立っているものなのにすべての罪を着せられているようでちょっと残念です。

皮脂と角質は取ればいいというものではありません。
でも取らなければ、皮脂の酸化などによるよくない影響もあります。

取ると取らないのバランス。言うは易し行うは難しですが、そこで出てくる界面活性剤!
方法論にとどまらない使い方のコツが体得できるよう、その性質と影響を理解しておきましょう。

 

髪に大切なバリア層

肌のバリア構造って? 皮脂と角質のはたらき

人の肌表面(表皮)は、さまざまな刺激や有害物質の侵入から肌を守っています。
それを肌バリア機能といいます。

そのバリア構造として、1次バリアを皮脂膜2次バリアを角層が担(にな)っています。

角層=表皮のいちばん上を構成する、角化した細胞(核がない死んだ細胞)があつまった層。基底層の基底細胞が押し上げられて、有棘層(ゆうきょくそう)、淡明層、顆粒層となり、やがて角層を作って最後には垢やフケとなって置き換わる。それをターンオーバーという。

 

皮脂膜のはたらき

皮脂膜には、次のような重要なはたらきと役割があります。

  • 保護–外部の刺激・異物から肌をまもる
  • 保湿–肌水分の蒸散をふせいでうるおいをたもつ
  • 抗菌–細菌の侵入をふせぐ

アルカリ中和能

わたしたちの皮膚には、皮脂膜によるアルカリ中和能が備わっています。
皮膚表面を弱アルカリ性のせっけんなどでも洗っても、通常は皮脂が中和して弱酸性に戻す働きがあります。いわゆるpH調整能力とも呼ばれるものです。

皮膚常在菌

また、人間の肌表面に存在する皮膚常在菌も、善玉の場合はその産生物(皮脂と汗を善玉菌が分解した物質)によって肌を弱酸性に保っています。それによって悪玉菌の増加を防いでいるのです。

皮膚常在菌=表皮ブドウ球菌やアクネ菌など

 

角層のはたらき

角層は角層細胞と細胞間脂質でできています。

角層細胞は、ケラチンという硬化したタンパク質と、NMFという天然保湿因子でできています。

NMF=Natural Moisturizing Factor

角層細胞のすき間に、角層細胞間脂質が満たされています。細胞間脂質の成分にはセラミドや脂肪酸、コレステロール等があります。なかでも、セラミドは約5割の濃度で含まれ、肌のハリを決める重要な役割をはたしています。

角層のはたらきは、「外部からの異物侵入の防止」と「水分の保持」です。

 

界面活性剤の役割と危険性

ダメージを受けた頭皮へのシャンプーが問題を大きくすることも

健康的な肌には、皮脂と角質がバランスよく存在しています。

けれども、皮脂をとりすぎると皮脂膜によるアルカリ中和能が一時的に失われてしまいます。
洗浄能力の強いソープで身体を洗ったり洗顔するのがよくないといわれるのはそのためです。

通常はまた分泌された皮脂が表皮を保護してくれます。
ただ、女性ホルモンの分泌が乱れていたり、紫外線などで角層が別のダメージを受けていたり、強いストレスがあったりすると、ターンオーバーがうまくいかないときがあります。すると角層の細胞間脂質やNMF(天然保湿因子)がしっかり整わず、皮脂は多く分泌されても頭皮の乾燥が防ぎきれないということが起こります。

そういう状態でシャンプーして皮脂を強く落とすと、さらに乾燥がすすみます。

界面活性剤は肌に害がある?

シャンプーやトリートメントなどに含まれる界面活性剤が問題視されやすいのは、経皮毒を懸念する人がいるからでしょう。皮膚から悪い物質が浸透して、体に悪影響をもたらすんじゃないかという趣旨ですが、管理人はいろいろ調べて、問題ないと考えています。

また、別に問題視されるのはタンパク質変性作用です。変性とは、性質が変化するということです。
上述したような、角層にある細胞間脂質のセラミドなどを変性させてしまう可能性があるということですね。

 人体においては、セラミドの合成障害によりアトピー性皮膚炎などを生じうる。
wikipedia

では、界面活性剤の入ったシャンプーは使わってはいけないのでしょうか?

いえ、「界面活性剤=悪」ではありません。

 

界面活性剤のさまざまな効果と用途

界面活性剤は、洗剤のみならず化粧品や食品、柔軟剤などさまざまな製品に使用されています。それは、界面活性剤が多種多様で有用なはたらきをするからです。

たとえば水と油のような通常なら混ざらない物質が、界面活性剤によって均一に混ざります。それは乳化とよばれています。また、汚れを分離させることはよく知られた機能ですが、乳化と分散の作用を利用しています。また、殺菌や起泡といった目的で使われたりもしています。

作用 用途
乳化・可溶化 台所用洗剤・シャンプー・化粧品
分散 化粧品・インク・墨汁
凝集 上下水道設備
殺菌 消毒液・石鹸
起泡・消泡 洗剤・アイスクリーム・消火剤
ぬれ性(保湿・浸透) 化粧品・洗剤・染め物
柔軟・平滑 リンス・工業用油

 

つまり、界面活性剤といっても、多くの用途とはたらきがあるのです。そのひとつに、タンパク質の結合を切断し、タンパク質を変性させる作用があるというわけです。

でも、強烈な脱脂力の界面活性剤を使ったときの話で、上であげたようにアイスクリームなどの食品に使われることもあるのが界面活性剤です。通常のシャンプーの製造で使われているものは心配なく、要は材料よりも使い方の問題で、乾燥しすぎるような使い方はしないなどの注意で防げます。頭髪への影響は、界面活性剤より、ストレスや紫外線などの活性酸素のほうがよほど大きいです。

 

シャンプー時には、汚れを「軽く取る」という気持ちで!

上述したように、皮脂をすべてとってやる必要はありません。
シャンプーするときには、軽くなじませるだけである程度の汚れを落とす作用が界面活性剤にはあります。その性質からいって、皮脂をこそぎ取ろうとするようなゴシゴシ洗いでは逆効果になります。

また、コンディショナーやトリートメントに配合される界面活性剤には、吸着性と殺菌性の高いものがよく使われています。それらを頭皮に付着させたまま放置すると、雑菌の繁殖をふせいでくれる常在菌の生態バランスを崩してしまうことになりかねません。また、女性にとても多い背中ニキビの原因のひとつとして疑われるところです。(背中は頭と顔の次に皮脂腺が多い部位ですので、それだけが原因というわけではありません。)

コンディショナー・トリートメント時には毛先だけ塗布し、肌につかないようにできるだけ気をつけます。すすぎ残しのないようにしっかりと流します。

 

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